あ行
- 相性
- =血の相性。父と母が、ともにすぐれ競走成績を残していたり、良血の評判が高かったとしても、その両親から必ずしも優秀な仔が誕生するとは限らない。競走馬の配合においては、父の血統と母の血統が、相互に補完・増強する関係になることが望ましい。その程度・度合いを「血の相性」という。
- I理論
- =IK理論。五十嵐良治氏が創案・開発したクロス馬分析をベースに、久米裕氏が発展・確立させた血統理論。「I」は「五十嵐」、「K」は「久米」のイニシャル。
- アメリカ系
- =米系。ヨーロッパからアメリカに渡って発展した血の系統。War Admiral-Man o’War-Fair Play、Blue Larkspur〜Black Toney、Ultimus-Commandoなど。以前は数代遡ればヨーロッパ系の血でありSt.SimonやBay Ronaldなどを通じて結合していたが、現代では血の世代が進み、結合が希薄になっている。
- アルゼンチン系
- =亜系。時に、チリやウルグアイ、ブラジル産馬の中に多く含まれる血をまとめて南米系とも。もともとヨーロッパから輸入され現地で根づいた血で、血の世代が後退した現代の米系の血との傾向は万全ではなく、弱点・欠陥をかかえることも。
- 異系交配
- 近親交配の対語。必ずしも明確な定義があるわけではないが、IK理論では、父母双方の血統の5代以内に、同一の祖先がまったく存在しない配合を異系交配という。5代以内に同一の祖先(近親クロス)が存在しても、それが単一クロスで影響力が弱い場合には、実質上は異系交配とみなす。それに対して、5代以内にまったく近親クロスが存在しない場合を完全異系交配という。
- 位置・配置
- クロス馬が、その効果を有効に発揮するためには、父母双方のほぼ同じ世代に存在することが望ましい。すなわち、Nearcoの血が父方6代の位置にあるならば、母方でも5〜7代あたりの位置にあることが、能力を確実に子孫に伝えるために必要な構造。位置が主に世代の前後を表すのに対し、配置は父母双方、祖父母4等におけるクロス馬の状態など、主に横の広がりを意味する。
- 遺伝効果
- =クロス馬の効果。IK理論の基本スタンスは、「サラブレッドの競走能力の遺伝は、父の血統と母の血統にそれぞれ存在する同一の祖先によってのみ行われる。したがって、これらの同一の祖先こそ、サラブレッドの競走能力を伝える遺伝因子なのである」というもの。したがって、「父母双方に共通の祖先」であるクロス馬が、両者の血統を結びつけ、子孫にその競走能力を伝達することを意味する。
- Vaguely Noble-Alleged型
- 影響度バランスの8つのパターンの一つで、父方の祖父母と、母方の祖父母の影響力が、ほぼ均衡している血統構成。世界の名馬の中でも多く見られる型。
- 影響度バランス
- 血統表中で2代目に位置する4頭の祖先(祖父母)を基準にして、それぞれが、それ以前の祖先(クロス馬)たちからどの程度の影響力を受けているかを、6代以内のクロス馬の評価点によって算出した数値が影響度数字。名馬になるためには、この4つの数値が一定のバランスを保った型を示す必要がある。分類すると、名馬のそれは8つのパターンに整理される。
か行
- 開花
- クロス馬によって伝えられた競走能力は、あくまでも潜在的な素質にすぎない。それを顕在化し、現実のレースで発揮して良績に結びつけるには、トレーニングによって、素質を開花させる必要がある。いくら潜在能力が高くとも、それを引き出せなければ、未勝利、または下級条件で低迷することも。
- 隠し味
- 影響度数字に換算されるような強い影響力を発揮していなくとも、その血がクロスし、開花することで、スピードやスタミナに一味加わるような祖先。たとえば、スピードのOrby、Bachelor’s Double、スタミナのHurry Onなど。
- 数
- 9代までの血統中に存在するクロス馬の総数。とくにどれだけなければならないということはないが、基本的には、5代に位置する祖先の6〜9代の間に、1〜4個のクロス馬があることが必要。そうでない場合には、血統中に弱点や欠陥を生じてマイナス要因になる。血統中に穴を生じないだけの数を確保し、必要にして十分な数だけあることが理想。
- 硬い芝
- 日本の馬場の特殊性。馬場が軽く、スピードも出やすいため、スタミナ要求度が低い。血の淘汰においてもスタミナの血が消滅し、スピード偏重になりつつある。
- 基礎構造
- =土台構造
- 決め手
- 勝負どころで発揮できるするどい切れ味のあるスピード。瞬発力。Tetratemaのクロス効果などが代表的。 また、強力な主導内へ主要なクロス馬が直接結合している血統構成の場合も、こうした瞬発力を備えるケースが多い。
- 9代分析表
- 9代前の祖先までたどって、その名を書き出し、さらに父母双方に共通して存在するクロス馬をチェックした分析表。IK理論独自の血統分析フィールド。
- 距離適性
- その馬本来の能力が最大に発揮されるレース距離。基本的には、スタミナ勢力とスピード勢力のバランスによるが、弱点・欠陥の存在や、血の結合なども加味して判断する。
- 近親交配
- 異系交配の対語。父母双方の5代以内の血統中に、同一の祖先が存在する配合形態。インブリードといういいかたもあるが、I理論では「近親クロス」と称する。父方3代目と母方4代目にHyperionが存在する場合には、「Hyperionの3×4のクロス」という表記をする。近親交配は、クロスする祖先の能力を強調・固定させるという意図で、配合に用いられるが、逆にマイナス面を強調させる危険性もある。また、あまり近親度の強い配合を行なったり、何代にも渡って近親交配を重ねたりすると、気性難や、馬体の変形・矮小化、受胎率の低下などの弊害を招くことも。
- キーホース
- 血統中の特定の血を生かす際に、クロスさせるべき血のこと。例えばPrincequilloのスタミナを生かすには、PapyrusやGay Crusaderをクロスさせることが有効。
- Grundy型
- 影響度バランスの8パターンの一つで、父方、あるいは母方のどちらかの影響力が支配的な型。世界の名馬の中では、あまり多くはない。
- クロス馬マーク
- 9代血統表中の馬名の前に記されている記号で、Hyperionの★、The Tetrarchの○のように、どの位置にどのようなクロスが存在するかを一目でわかるようにしたもの。IK理論独自の工夫。
- 傾向
- たとえば、父方の血統と母方の血統が、同じ血を主導勢力や、キーホースにしている場合、両者は「血の傾向が合っている」という。「相性がよい」ということに近い。逆の場合は、「血の傾向が異なる」といい、マイナス要素が強くなる。
- 系列ぐるみ
- クロスの形態の一つ。たとえば、Nearco-Pharos-Phalaris-Polymelus-Cylleneと続く系統のすべてが、連続したクロスになるような場合を、「系列ぐるみのクロス」といい、クロス馬の効果は増強される。
- 結合
- =結合度。クロス馬は、相互に他のクロス馬を通じて結合し、全体が一体化・統合化していることが望ましい。血の結合が弱いと、競走能力にマイナスに作用し、反応が鈍い、成長力が乏しい、底力に欠けるなどの短所につながる。
さ行
- Sassafras型
- 影響度バランスの8パターンの一つ。祖父母4頭のうち、1頭の影響度がとくに強く、他の3頭がほぼ均衡している近親交配馬。世界の名馬の中では主流のパターンの一つ。
- 質
- クロスする血、特に主導勢力となる血は、自身の血統構成が優れ、しかも優秀な競走成績を残した馬であるほどよい。Hyperion、Nearcoなどは、その代表例。
- 実質異系交配
- 父母双方の5代以内に共通の祖先(近親クロス)があっても、それが単一クロスや中間断絶クロスで影響力が弱く、系列ぐるみのクロスが6代以降に存在する場合には、形は近親交配でも、クロス効果の面では異系交配とみなす。これを、完全異系交配(5代以内にまったくクロス馬がない場合)に対して、実質異系交配という。IK理論独自の見解。
- 弱点・欠陥
- =不備。5代目の祖先を基準にして、その6〜8代の位置にクロス馬がなく、9代になって初めてクロス馬がある状態を「弱点」、9代になってもまったくクロス馬がない状態を「欠陥」という。それらが生じた場所の影響度の強さや、異系交配・近親交配の違い、血の結合度の違いなどによって、マイナス効果の程度を判断する。
- 主導勢力
- 血統中で影響力を発揮するクロス馬には、全体を統合し、リードする血が必要。その役を担うのが主導勢力。主導勢力は、その位置する世代(近い世代ほど影響力が強い)や、存在する数(多いほどクロス馬効果が確実)、あるいはクロスの形態(系列ぐるみ・中間断絶・単一)などによって、判断する。主導勢力は、種類が少なくシンプルで、位置・数からその存在が明確、なおかつ他のクロス馬と結合を果たして、リーダーシップを発揮しやすい状態であることが望ましい。
- 種類・数
- 血統中に存在するクロス馬の種類は、必要にして最少限が望ましい。種類が多くなると、開花に手間どり、反応も鈍くなる。かつての名馬はRibotのように、種類が20台の馬もいたが、現代は、種牡馬の数が増えたことで、クロス馬の種類も多くなり、40台なら少ないほうで、70を超える馬も少なくない。平均は50〜60前後。
- Three Troikas型
- 影響度バランスの8つのパターンのうちの一つ。祖父母4頭のうち1頭だけの影響度がとくに低く、他の3頭の影響度がほぼ均衡している型。世界の名馬の中では少数派。
- 成長力
- 早熟型とは逆に、競走能力が充実してくる3歳秋以降になって真価を発揮する力。良質なスタミナの血などにより裏づけられる。それを実現させる人間の努力(育成・鍛練)も不可欠の要素。
- 世代
- =位置。父、祖父、3代父、あるいは母、祖母、3代母など、血統のタテ系列の位置づけ。世代が近いほど影響力が強く、遠くなるほど影響力は弱まる。
- 世代後退
- 9代血統表の中で、全体的にクロス馬が7代以降に後退していること。IK理論ではそれによりクロス馬の能力参加が弱くなり、ツメの甘さの要因に繋がると判断される。
- 世代ズレ
- 父の血統に含まれている血と、母の血統に含まれている血の世代が、合致せずズレていること。正常なクロス馬の効果を期待する上で、世代ズレは好ましくない。かりに、Blandfordの血が父方には4代目、母方では7代目にあったとすると、両者の間は2代以上開くので、クロス馬の効果はないか、あっても極めて少ないと判断し、クロス馬の扱いにしない。
- 全兄弟・姉妹
- 父と母が同じ兄弟・姉妹は、全兄弟・姉妹と称し、IK理論では同一馬・同血馬として扱う。クロスも成立し、能力も同等と見なす。解説文中で、以下のように=で結ばれている馬名は全兄弟・姉妹を表す。代表的な全兄弟は、Fairway=Pharos、Sir Gallahad=Bull Dog、Sickle=Pharamondなど。
- 前面
- =近い世代。「スピードの血が前面でクロスしている」というような場合は、スピード系の祖先が、5代以内でクロスになっているようなケースを指す。
- 早熟タイプ
- 2歳〜3歳前半頃までは活躍するが、3歳秋以降はパッタリと成長が止まるタイプ。血統構成上の特徴としては、前面でクロスしたスピード系の血を主導とし、弱点・欠陥を抱えながら、クロス馬の種類・数の少なさで、仕上がり早の構造を持ち、スタミナの核を欠いたケースが多い。
- 底力
- 勝負強さや粘り強さ。大レースで、強敵相手のレースで発揮される強さ。血統中に欠陥を抱えたり、スタミナの核を欠いたりすると底力が乏しくなる。血の質、成長力とも関連が深い。
- 祖父母4頭
- 血統表中2代目に位置する父の父、父の母、母の父(=BMS)、母の母の4頭を指す。影響度数字を算出する基準となり、この4頭について出した数値が影響度バランス。
た行
- 単一
- =単一クロス。例えばNearcoがクロスした場合、その父のPharos、祖父のPhalarisがクロスにならず、曾祖父Polymelusからまたクロスになるような場合(すなわち間が2代以上開いた場合)、これをNearcoの単一クロスという。遺伝効果としては、系列ぐるみのクロス、中間断絶のクロスよりも弱い。ただし、影響力は弱いが、血のまとめ役として、また「呼び水」の役割を果たして、有効に機能することはある。3×3や3×4の近親単一クロスをもちながら成功するパターンに多い。
- Tantieme-Caracalla型
- 影響度バランスの8パターンの一つ。影響度の評価点がすべて低い簡潔な異系交配馬の型。世界の名馬に多いパターンの一つ。どちらかというと晩成型の馬が多いことも特徴。
- 血の流れ
- 父母ともに、自身の血統構成がHyperionを主導にしていた場合、両者は「血の流れが合っている」という。「相性が良い」ということとほぼ同義。
- 中間断絶
- =中間断絶クロス。例えば、Nearco-Pharos-Phalaris-Polymelus-Cylleneと続く血統中で、どこか一つがクロスにならず(系列ぐるみのクロスにならず)、途切れた形。クロス馬の効果としては、系列ぐるみよりも弱いが、単一クロスよりは強い。
- ドイツ系
- =独系。近年日本にも多く輸入されているMonsunやAcatenangoなどに多く含まれるドイツに根づいた血。Ticino、Alchimist、Helordなどがそれで、主にDark Ronaldを介してHyperion系と結合を果たしていたが、近年ではこのDark Ronaldが10代以降に後退し、結合が弱くなったり、不備を生じたりするケースが多くなってきた。サンデー系種牡馬ではマンタッハンカフェやアドマイヤジャパンの母系がこのドイツ系。
- 同血馬
- =同一馬。同じ血で構成された馬同士は同血馬として、血統構成上は同一馬として扱う。全兄弟・姉妹は当然同血馬になるが、他に、父が同じで母同士が全姉妹というような馬も、同血馬となる。
- 土台構造
- =基礎構造。8〜9代の位置で、同一の血が全血統に渡って多数散在して、全体の血を統一する役割を果たす構造。この役割を果たす代表的な血は、以前はSt.Simon、Bay Ronaldなどが主流だったが、近年、これらの血は10代以降に後退しているケースがほとんど。現在はNearco、Pharos、Hyperion、Gainsboroughなどが担い手になっている。
な行
- Nijinsky型
- 影響度バランスの8つのパターンの一つで、父方の祖父母のどちらか一方と、母方の祖父母のどちから一方の影響力が強い型。世界の名馬の中では、多数派とはいえないパターン。
- 日本向適性
- =日本適性。軽い馬場に適応するスピード系の血を前面で生かしたパターン、あるいは少ないクロス馬でまとめるといった血統構成を持つ。
- 能力転換
- =能力変換。実際のNasrullahの競走能力と、子孫の血統中に登場したNasrullahのそれとは、異なるということ。あるいは、同じHyperionのクロスでも、Alibhai(スタミナ系)の父として登場する場合と、Abernant(スピード系)の父として登場する場合では、その能力が異なるという場合に使う場合もある。
は行
- BMS
- ブルードメアサイアー。母の父。
- フランス系
- =仏系。Alcantara、Perth、Rabelais、Djebel、Tourbillonといったフランスに根づいた血。主にスタミナ源として能力参加を果たす血。ただし、他の主要馬クロス馬との結合・連動が弱く、 血をまとめることがなかなか難しい。近年ではLalunのクロスにより、他系統と連動を果たすケースが多く見受けられる。
ま行
- Match III型
- 影響度バランスの8パターンの一つ。祖父母4頭の影響度がすべて極端に低い型。世界的な名馬には、あまり多くないパターン。
- 名血の8条件
- クロス馬をチェックするポイントで、1)主導勢力、2)位置・配置、3)結合度、4)弱点・欠陥、5)影響度バランス、6)種類・数、7)質・傾向、8)スピード・スタミナの8項目。これらすべての項目をクリアーできもば、すぐれた血統構成(=名血)と判断できる。
や行
- ヨーロッパ系
- =欧州系。競馬発祥国のイギリスを中心に、伝統国のフランス、イタリアなどで継承され、発展してきた血統。アメリカ、オセアニア、日本などは、もともとはすべてヨーロッパ系の血を輸入することで競馬を成立させてきた。ただし、1970年代から、アメリカ系の血がヨーロッパに逆輸入されたり、近年は日本でもアメリカ系の血が主流になりつつある。
- 呼び水
- 3×3や3×4など、近い世代で単一、あるいは中間断絶クロスをつくり、その中に含まれた血を、全血統中に散在させることで、血をまとめる形態。その近親クロスが反応すると、そこに含まれる血が動きだし、さらに全血統中の血が反応するという意味で、「呼び水」的な機能を果たすと考えられる。
ら行
- Ribot-Sea Bird型
- 影響度バランスの8パターンの一つで、祖父母4頭のうち1頭だけの影響がとくに強く、他の3頭の影響力がほぼ均衡している形態。同じパターンでも、Sassafras型が近親交配なのに対し、このRibot-Sea Bird型は異系交配の場合。世界の名馬の中で、主力パターンの一つ。
わ行